雫石民芸社では、岩手県雫石町に伝承されてきた農村文化の素晴らしさを、芸術品の制作、衣装制作などの技術を用いて後世に伝承することを目指しております。
また、岩手県雫石町に限らず、同県の滝沢市、盛岡市の文化継承に貢献させて頂くべく、技術提供を行って参りました。
雫石あねっ子
紺絣の野良着に編み笠姿の「雫石あねっ子」。
雫石あねっこは、京美人の流れをくむ色白でふくよかな顔 立ちで、性格は素朴な中にも芯の強さを持ち、働き者といわれます。
南部美人の代表ともいわれますが、健康的なその姿を、今日ではほとんど見ることができません。
野良着をみんなが着なくなった頃、何とか形に残したいと考えて思い付いたのが民芸社の人形づくりとあねっこ衣装の伝承です。

「あねっこ衣装」
かすりの着物を黄色の帯で結び、帯の黄色が見えるように前掛けを着け、黒のももひきに白い足袋と草履を。
手には手甲、頭には豆絞りの手ぬぐいと赤いぼんぼりの付いた編み笠をかぶります。この細かい取り決めには、チャグチャグ馬っこでの「乗り手・引き手の衣装も含めての文化財である」という強い思いが込められています。



チャグチャグ馬っこ

小荷駄装束(参勤交代で江戸へ上る際に、幕府への献上品などの荷物を運ぶ馬を綺麗に着飾ったもの)を着せた馬を引くのが流行しました。
そこからチャグチャグ馬っこの原型が芽生えたと言われています。
また、鳴り輪という熊よけのドーナツ型の大鈴を付けた馬も登場し、その鈴の音から「チャガチャガ馬コ」などとも呼ばれるようになりました。
昭和53年に文化庁から「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択され、平成8年には「チャグチャグ」となる鈴の音が、環境庁(当時)の「残したい日本の音風景100選」に選出されています。
忍び駒

「忍び駒」は、むかしむかし、夜にこっそりと誰にも見られず、裸のわらの馬を神前に供え、「願」をかけると縁結びや子孫繁栄の願いがかなえられたと言われてきました。
そして願いが叶うと、その裸のわらの馬を持ち帰り、赤・黒・黄色の布で飾り再びお礼参りし供えたという繰起の良い・郷土玩具です。
郷土民芸品の伝承
雫石の昔ながらの暮らしを偲ばせ、その土地の息吹を伝える民工芸品は、人々が大切に守ってきた暮らしの風習や伝統によって支えられています。
雫石には、そんな働き者の雫石あねっこを題材とした人形や、素朴な里の暮らしが思われる ワラ細工、木彫りなど、昔なつかしい、ほのぼのと心暖まる民芸品がいっぱいです。



令和2年2月17日、
私たち民芸社は雫石町役場を訪れ、代表である階美榮子が製作した民芸品が、岩手県立博物館に保管されることを猿子町長らに報告しました。

今回作り上げた民芸品は約30点。
県立博物館の依頼で「雫石あねっこのかすり」や「裂き織り」なを昭和25年頃当時の製法を用いて、約2ヵ月間かけて手縫いなどで一つ一つ製作いたしました。
製作された民芸品は、岩手県立博物館に資料として保管されます。
※展示はありません。